世界史の教科書をまる暗記する受験生のように、「バッカスの選択」を一字一句ご愛読の諸氏であればご存知のキーワード「酔い足し」。いやいや知らんがな、という方のためにご説明すると、「料理を美味しくする脇役としてお酒をちょい足しする技法」のことで、我々が勝手に提唱している酔狂なテクニックである。
これまでに「ウイスキー『余市』で肉をフランベ」、「ハマグリの酒蒸しにウイスキー『白州』で追い打ち」、「フカヒレのスープに紹興酒を投入」、「ゴーヤチャンプルを泡盛で香りづけ」などを記事で紹介してきたが、今回は初の“スイーツへの酔い足し”である。
お子ちゃまの舌を持つ男
唐突だが、編集長Dは無類の甘党だ。
こんな風体の露出が多いためか、人には「酒は辛口の日本酒、コーヒーはブラックしか飲まないんですよね」としばしば言われるが、1杯目からカルーアミルクでも何の問題もないし、スタバに行けばダル甘のホワイトモカをグランデかベンティでしか頼まない。マックシェイクのMサイズを飲むためだけに遠回りしてマクドナルドに立ち寄ることさえある。
アラフォーになった今でさえ、いつか叶えたい夢は「業務用のホイップクリームのあの絞り袋を口にあてがい、直で吸いたい。思う存分吸いたい。夢中で吸いたい」である。今年も七夕の短冊に書いた。自己分析するに、これはもう「甘党な大人」の範疇ではなく、味覚がお子ちゃまのままで止まっている、ないし、「味覚の第二次性徴」がおそらく私には到来しなかったのではないかと思う。
「糖分の塊」対「伊達」