編集長Dである。「バッカスの選択」公式ツイッター https://twitter.com/c2h5ohjp でちびちびとつぶやき続けている「実験シリーズ」。今週は「カルピスと混ぜてうまい酒選手権」だ。まあこれまでやらされた「いろんな酒に生卵を入れる」「いろんな酒を冷奴にかける」に比べれば、ずいぶんと穏健になったもんじゃないか。戦国時代が終わってようやく天下泰平の江戸時代が始まった気分だよ。鳴かぬなら酒飲んで忘れよう、ホトトギス。
じゃあ今週も粛々と結果発表いくよ。酒は5種類だ。もう冒頭の能書きに無駄なエネルギーを割くのは、やめやめ、やめたんだよ。読者のため? そう言や聞こえはいいが、そうじゃない。俺のために決まってるじゃないか。俺は俺が一番大事なんだ。その次が酒だ。世界は俺と酒のためだけにある。他に何が必要なんだ? 愚問はよせ。戯言しか言えないような口は、酒で塞いでやる。何?結局能書きが長いだ? うるさい、それが戯言だっていうんだ。黙って早く1本目を持って来い。そしてお前も飲め。豆鉄砲を喰らったホトトギスみたいな顔しやがって。
両者、互いにストレートなんで、ちょっとずつ。
軽く混ぜるとこうなる。竹鶴さん、怒らないでね。
マスターブレンダ―かお前は。おでこにシワ寄せやがって。
でも香りはいいんだよね。嗅いじゃうんだよ。すんげえマロマロ、まろやか。……しかし、いちいち顔をつくらなくていいよ。
やっと飲む。濃厚。思ったよりカルピス感は出てこない。ベースはウイスキーで、それがひたすら濃厚になるイメージ。舌にからむ感じは非常になめらかで、アルコールのキツさはなくなる。
これはこれで十分イケる飲み物なんだが、あえて難点を挙げれば「まだ途中な感じ」があるということか。この濃厚な液体がこれから何らかのプロセスを経て至高の酒に仕上がる、その“原料”みたいな伸びしろを感じさせる。オンザロックにすると、もしかすると表情がまた変わるかもしれない。
ということで第5位。この内容で第5位。いかに今回の選手権がレベルの高いものかがわかるだろう。ちなみにこの成績は竹鶴さんのせいではない。もちろんカルピスさんのせいでもない。他の4本がさらにいい仕上がりだったというだけだ。
チョロチョロチョロ。
混ぜるとこんな感じ。もう、だいたいわかるよね?
ゴクリ。ははあ。ゴクゴク。ですよねえ。そうなりますぁねぇ。
これ、どぶろくです。ニヤリ。……だから決め顔でいちいち人をイラつかせるなよ。
ウイスキーのときと違って、こっちは日本酒よりもカルピスが強く出てくる印象。その甘っとろい、トロトロの味と舌ざわりが日本酒の隅々まで行き渡り、全体として見事に「どぶろく感」を再現している。うまい。
さらにカルピス由来のほのかな酸味も立ってくるので、そうなるとマッコリ的ですらある。諸君、お分かりいただけるかね、この高度な再現性。
なんだか熱弁をふるいたそうだが、長そうなので強制終了。でも普通にスルスル飲めるうまさ。スルスルいけすぎて危険性すら感じるうまさだ。
はいドボドボドボ。
見た目は、若干の白濁が見られる程度の変化。
飲んでみる。
おおお!!
うまいっす。これね、いわゆる「パナシェ」ですな。ビールをレモネードなどで割る爽やか系カクテルね。ポイントはカルピスの甘味だけでなく、酸味もよく出てくることで、おそらくビールのシュワシュワ炭酸が効果的に作用しているのではないか。結果としてレモン的な甘さと酸っぱさのほどよく入り混じった、フレッシュな風味が前面に出てきて、ビールの苦味を気持ちよく上回っていく。
非常にオススメ、と、編集長Dも申し上げているようだが、いかんせん怪しげな押し売りの人にしか見えない。
トロトロと、静かに入れていく。
妖しくも魅惑的なグラデーション。
では、いきやす。
んん!?
これ、どっかで出会った匂いだなあ……、どこだっけなあ……、なんか小さかったころのような……。と、しばし考えを巡らせた挙句、ある記憶に行き当たった。
これ、ヤクルトの「ミルミル」だわ。
味というか、香りね、香り。あのほのかなベリー系の甘さと、まろやかな乳っぽさ、そして体に良さそうな「菌」由来の、ヨーグルト的な酸っぱさの入り混じった香り。あれが鼻にツンツンくる。まあ、ブドウとカルピスなんだから、一緒になるとそういうことなんだろうけど、想像した以上にワインが負けて、全体に乳製品感が勝ってくる。
とはいえ、それは香りの話で、口に含むと今度はブドウの方がしっかり出てくるんだよな。不思議だ。香りほどには乳っぽさや甘さは感じられず、果実的な酸味がグワッとくる。サングリアに近いイメージ。だから氷なんかを浮かべて飲むといいのかもしれない。
そんな不思議な体験もありつつ、飲み物としてのまとまりも上出来ということで、これが第2位。が、これを上回る完成度のカルピス飲料を、我々は見出してしまった。それがお次のこちら。
互いにストレートでぶつかり合う、個性と個性。
こちらは陽気な南国テイストのグラデーション。
一気にあおる。グビグビ。
クーッ、うまいぜ。まったくスキがない。これはもう、こういう“リキュール”として既に完成形だ。この甘ったるい感じ。タルッタルのダルッダルな感じ。たまんねえ。まあサトウキビの酒にカルピス入れてるんだから、そりゃダル甘にもなるってもんよ。
あのカラッと晴れた真っ青なハバナの空の下でよお、キラキラ光るカリブの海と派手なビキニのねーちゃん見ながら、こういうダルッダルに甘い酒飲んでるのがよ、最高に幸せだったよなあ(……。なにか妄想が始まったようです)
くっそ暑い日にはよ、やっぱりくっそ甘い酒に限るわけよ。なあホセ。(……。ホセって誰なんでしょうか。ハバナ生まれのキューバのおっさんが憑依したようです)
まあ何にせよ、甘いラム酒と甘いカルピスをストレート同士でぶつけてできる、最高に甘々の飲み物は、非常に完成度が高かった。甘い中にも、ラムが持つわずかな苦味、カルピスがはっする酸味がバランスよく顔を出してくるのがまたいい。これをさらに何かで割ってカクテルにしたり、オンザロックにしたり、発展させるとより真価を発揮するかもしれない。
ということで、以上「カルピスと混ぜてうまい酒選手権」。今回はなかなかハイレベルな争いだった。前回の「冷奴にかけてうまい酒」が2位でやっと及第点だったのに対し、こっちは第5位も十分楽しめる一杯に仕上がっていた。
また新しい実験は続くので、その様子は引き続き「バッカスの選択」公式ツイッター https://twitter.com/c2h5ohjp でチェックされたし。では諸君、いつかハバナの空の下で会おう。