なぜに「白州」なのか? その理由を知るには、「バッカスの選択」の別記事「【210組み合わせ全査定に挑戦】ジャパニーズウイスキーに合うツマミを独断せよ」の(3)「サントリー白州」編を一読いただくのが早いかもしれない。
日本のウイスキー6本×ツマミ35種の組み合わせを総当たり戦で全査定したこの企画で、不肖私の舌と鼻と独断と偏見により「白州」に合うツマミの第1位に輝いたのが、「ホタテのバター醤油味缶詰」だった。
ホタテの磯くささとバターの乳製品特有のまろやかな甘味のバランスが、「基本フレッシュ&秘めたスモーキー」の白州と完璧にマッチする、そんな寸評を加えた。確かにこのカップリングは、もぐもぐ、かんふぇひだ、もぐもぐ、とホタテを噛みしめながら、このとき私の頭の中には既に別の構想が明確なビジュアルとともに浮かび上がっていた。
ハマグリの酒蒸しである。
同じ貝類、香る磯の風味、弾力のある歯ごたえ、そして味付けのバター。そう、バターだ。その絵が頭の中に見えたとき、「酒蒸し」の「酒」という字のイメージが混線してきて、私の意識に一つの欲望が萌芽するに至った。
「ハマグリの酒蒸しに白州を入れたい」
どのみち酒は入っているのだし、何より合わないはずがないという確信めいた思いが気持ちを支配していた。そして今回、ついに妄想が現実になる日が到来したのである。
酒におぼれ、白州にもおぼれる