北海道生まれが世界をザワつかせているらしい
エピソード(4)では「Craft Label 香り踊るジャグリングIPA」の製造プロセスをひも解きながら、クラフトビールにおけるホップの役割、その奥深さをご紹介しました。
そこでは3つのホップが登場しましたが、この世界にはそれ以外にも多種多様な味と香りを生み出すホップがそれこそ銀河の星の数ほど(……は、ないかもしれません(汗)が、とにかくたくさん)存在しています。
そんな中で今、クラフトビールブームの中心地であるアメリカ、そしてヨーロッパで、なんと日本生まれのホップが旋風を巻き起こしているというではありませんか! そしてそのホップ、なんとジャパンプレミアムブリューの親会社であるサッポロビールが育種開発したものだというではありませんか! その名も「ソラチエース」。ソラチ、というのは育種された北海道の地名、「空知(そらち・空知郡や空知川)」に由来します。
「今、海外のクラフトビールの醸造家と話したら、たぶんみんなソラチエースを知ってます。おそらくそんな日本生まれのホップは他にないんじゃないでしょうか。一言でいうと、『ビールには似つかわしくない香り』を持つホップです。クラフトビール好きな人なら、これまでいくつもビールの香りをかいできたと思うんですけど、そのどこにも属さない、というイメージのフレーバーがあります」
もう頭の中を「!」と「?」がぐるぐるしまくっている次第なんですが、ええと、全然ビールらしくない香りがあると、なのにクラフトビール界が騒然としているんだと、……ええと、すみません、どういうことなんでしょうか……。
「アメリカで火がついたクラフトビールの流れというのは、『今はまだ誰も知らない、何か新しい味や香りを生み出す』というところに大きな価値を置くというか、それをモチベーションにして発展してきたところがあります。ですから『ビールに似つかわしくない』というソラチエースの香りは、むしろ最高評価に値するものだったわけです。このホップを使えば普通とは違う、差別性が間違いなくあるビールができる、と醸造家たちが注目したんですね」