それだけではただのスイーツだ。まったく芸がない。だが、このバルではグレンモーレンジィを酔い足しするという。これはファインプレイだ、まさに 「バッカスの選択」向きじゃないか。ところで、酔い足しとは何か? まだご存じない方のために、編集長Dの解説をコピペするので読んでもらいたい。「『料理を美味しくする脇役としてお酒をちょい足しする技法』のことで、我々が勝手に提唱している酔狂なテクニックである」。
そういうことである。酔い足しこそ、われわれの専売特許。スプレーに入った艶美なグレンモーレンジィがそこにいるのに、酔い足ししないなんて考えられない。据え膳食わぬはなんとやらだ。
アイル・オブ・ジュラ同様、グレンモーレンジィもスモーキーさが弱く、バニラ香が漂うシングルモルトウイスキーだ。スプレーに入ったグレンモーレンジィを、シュッシュと吹き付ける。チョコレートの表面に吹き付けられると、オランジェットがそれまで見せていなかった表情に変貌する。光沢のある表面が妙に妖艶だ。
グレンモーレンジィをまとい艶やかなオランジェットは、より味が際立つ印象を受けた。チョコレートの甘さとわずかな苦み、オレンジの酸味と皮部分の苦み、それらすべてが。全体的に甘さと苦みが入り混じったオランジェットと、バニラ香でやわらかい味わいのアイル・オブ・ジュラは見事にマッチする。手前みそだが、酔い足しってホントに素晴らしい。
酔い足しでワンアップした彼女(オランジェット)と、英国紳士(アイル・オブ・ジュラ)の大人な関係。酒呑み系スイーツオヤジにはたまらないマリアージュだった。今後も、“スイーツつまみ”を探していきたい。