勝浦の初ガツオの漬け、名付けて「カツオパッチョ」
房総勝浦と言えば、カツオです。誰でも知っている俳句「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」。花の季節が過ぎ、山は早緑と深緑のまだら模様となって浮き上がり、さえずりもまだ慣れないホトトギスが方々に掛け合いを行っている時期は、初ガツオが出回る頃でもあります。
初春の頃はフィリピン近海から黒潮にのって、台湾から鹿児島沖辺りまで北上してきたカツオ。青葉の頃に、千葉県沖に到達し、勝浦港へ水揚げされます。
旬を迎え初めて獲れた魚介類や実りの時期に初めて収穫された農作物は、初物と言われ珍重されてきました。生気がみなぎって、食べれば新たな生命力が得られると考えられたからです。初ガツオも同様で、「初ガツオを食べると長生きできる」とされ、大変珍重されました。
江戸の頃の初ガツオは鎌倉あたりの漁場から供給されたため、俳聖松尾芭蕉は「鎌倉を 生きて出でけむ 初鰹」と詠んでいます。
勝浦で揚がった初ガツオを、ちょっと漬けにしました。ゴマ油をたらした生醤油に5分ほど漬けたカルパッチョなので、「カツオパッチョ」です。海の旨味が濃くなった感じです。マグロと違ってカツオは漬け過ぎるとベタベタしてしまうので、あっさりと漬けるのがいいと思います。
カツオパッチョにはあっさりとした「辛口」が合いました。本当は“海勝浦”の鵜原海岸でも“山勝浦”の古木の森でも、地元勝浦で味わえればよいのですが。
保冷技術がよくなったのは最近の話。江戸の昔に生きた人たちは、きっと魚を漬けにして味わっていたことでしょう。このカツオも、魚屋ではまだ目が澄んで新鮮な状態でしたが、今回は江戸の俳人たちを偲んで漬けにした次第です。「目には青葉……」と詠んだ江戸中期の俳人、山口素堂も、この味が待ちきれなかったにちがいありません。
勝浦で揚がるカツオについては、勝浦漁業協同組合
http://www.katsuura-gyokyou.jp/seafood/