いい具合にくたびれる「越百」
最後はこの方、マルス信州の「越百」。インディーズ系の蒸溜所でつくられる個性派。「越百」と書いて「こすも」です。ちょいキラキラです。しかし味わいはギラギラです。ちょいワルです。
グラスで飲むと、まあキャラの濃い、ドスのきいた香り。芳醇にして豊潤なモルト由来の穀物味がビロードのように広がります。絢爛豪華、色でいうとゴールド、季節でいうと真夏、戦国武将でいうと豊臣秀吉、押してダメならもっと押せというような、ド派手なオペラを見ているような、もう満漢全席フルコースに匹敵する存在感、圧力ですね。
それを、into the「ミズナラ桝」。
するとあら不思議。まるくなります。ギラギラしていたちょいワルオヤジが、絶妙にいい具合でくたびれます。完全に晩年の秀吉、すっかり子煩悩になってしまった太閤殿下ですね。非常に口当たりがまろやかに、飲みやすくなります。
が、まるくするだけで、息の根までは止めないのが「ミズナラ桝」の包容力。最初は牙が抜かれてしまったかに思えた「越百」の強い個性、しっかりしたモルトの香りやキャラメルを焦がしたようなクセのある甘さが、口に含んでから遅れて到来します。このクドいまでのしぶとさがまたいいですねえ。
「越百」×「ミズナラ桝」は“黄昏”ですかねえ。ギラギラに輝いていた太陽が落ちていくんだけれども、最後に意地のもうひと輝き、全天を真っ赤に染め上げながら沈んでいく。一見弱々しくなったようで、実は最もその個性が色濃く出る瞬間。それが楽しめる気がします。これも「ミズナラ桝」マジックでしょうか。
ということで三者三様のメタモルフォーゼでした。この傾向を参考に、皆さんもウイスキーinto the「ミズナラ桝」を楽しんでみてください。
【来週の水曜「枡の日」は……】
あの銘柄は「ミズナラ枡」でどう変わる?ウイスキーを「ミズナラ枡」で飲み比べ(2)スコッチ・シングルモルト編 を配信予定です。お楽しみに!