【編集長D史上最高のグレーン原酒かも?】キリンのウイスキー「富士山麓」のイベントにて完全にグレーンに開眼してしまった話(前編)

そしてもう一つ、さらにスゴイのは(これこそウイスキー好きでないとピンとこないかもしれないが)“グレーンを原酒さらに3種類作り分けている”すなわち“グレーンの蒸溜器が3タイプ揃っている”すなわち“グレーンに対する力の入れっぷりが半端ない”という点だ。

一般に香り・風味の骨格となるのはモルト原酒で、グレーン原酒はそれにブレンドして飲みやすくするための“脇役”であるというのが、スコッチスタイルを源流として始まった日本のウイスキー界における基本認識である(スコッチといえば、そう、シングルモルトだ)。

しかし富士御殿場蒸溜所では、スコッチに加えてアメリカやカナダのスタイルも取り入れ、ハイブリッドなウイスキー作りに挑んできた歴史がある。バーボンに代表される北米スタイルと同じく、「富士山麓」ではグレーン原酒にも重きを置いているのだ。というより、むしろグレーンが“主役”といっていい。

それを証拠に、グレーン原酒の蒸溜に使う装置は、一般的な“脇役”タイプを作るのによく用いられる「マルチカラム(連続式蒸溜器)」のほかに、「ケトル」と「ダブラー」という国内ではあまりお目にかかれない、かなりマニアックな蒸溜器を使用している。これでグレーン原酒を個性の違う3タイプ作り分けるのだ(対するモルト原酒は2種類である)。この手厚さ。こだわりよう。グレーン原酒にここまで力を注ぐ蒸溜所は、国内では富士御殿場が随一ではなかろうか。

そして「富士山麓」グレーンとの衝撃の遭遇