余市の「酔い足し」は何が違う?
こうしてドラマチックに完成した牛ヒレ肉ステーキwith余市フランベ。肉が柔らかく仕上がり、旨味が増して感じられるのは通常のフランベと同様の効果だが、やはり特筆すべきは肉にしっかりと移ったスモーキーな香りだ。
ラムなどでは熟した果実のように落ち着いた甘さが立ってくるが、余市の場合はシャープな塩気というのか、潮風に当てられた干物のような香ばしさが喉から鼻に抜けていく。これが肉に染み付くと、ちょうど煙でいぶしたような燻製感が漂ってきて、実によくハマる。「フランベされたステーキ」と聞くと、ひと手間かけて洗練されたジューシーさを想像するが、それよりもステーキのワイルドな側面、「焼いた肉」というシンプルな事実を強調してくるのが、余市のフランベなのだ。
「燻製感」+「肉」と言えば
さて牛ヒレ肉さんをいぶしにいぶしたスモーキー余市だが、この燻製感を味わってしまうと、やはりアイツとの一戦も見たくなってしまう。
煙たい感じがよく似合うソーセージ先輩だ。体育館の裏でモクモクやっていたところを、ひょんなことから通りかかった余市にとがめられ、その過去も知らずにいちゃもんをつけたソーセージ先輩。血の気ならぬ肉汁の気が多い若造の、運命やいかに。
一瞬で返り討ち。派手に炎上。
もうモクモクしねえか? し、しません! 男の約束だ、ソーセージ。お前にはまだ未来がある。道を外れるのはオレだけで十分だ。は、はい、余市さん! ……おっと、またフィクションに逃避してしまった。失敬。
しかしこんなB級映画のような演出で仕上がったソーセージフランベだが、その完成度たるやA級の格付けを叩き出した。まずはこのテリッテリ、プリップリ、ツヤッツヤのビジュアルをご堪能いただこう。
これが口に入れると、パリッとはじける食感があるのはもちろん、その瞬間にあふれ出る肉汁が余市特有の「潮風」フレーバーにギュッと引き締められる感覚がある。粗塩をすり込んでさらに塩気が増す鮭のように、余市で(文字通り)焼きを入れてやることでソーセージの燻製感は数倍に膨れ上がる。いやもう余市さんさすがです。これなら何度でもボコってやっていただきたい。ソーセージ先輩には気の毒だが。
ではとりあえずビール、でなくて
ということで自画自賛の余市フランベであるが、完成後はもちろん余市をチビチビやりながらつまむのが一番だ。
ビジュアル的にはビールというのも一理あるが、缶をプシュッとやる手をぐっと抑えて、フランベついでにストレートかロックで一杯やってほしい。ハイボールも爽快だが若干スモーキーな風味が飛んでしまう。しっかり煙たく仕上がった肉を、しっかり磯くさい余市でガツンと迎え撃つ。というのがやはり理想的なカップリングだ。
そして、あの名も無き漁村のうらぶれた男のことを思ってみる。そろそろ、誰にはばかることもなく遠い目をしたっていいだろう。手にはもう、グラスが握られている。では皆さん、お先に。いただきます。