【210組み合わせ全査定に挑戦】ジャパニーズウイスキーに合うツマミを独断せよ(1)

当方がチョイスした「日本代表」ウイスキーの6本

「210組み合わせ?」と小首をかしげた方もいるだろう。無理もない、私もかしげた。

2016年某日、都内某所、私の前には6本のジャパニーズウイスキーが並んでいた。さらに目を移すと35種類のツマミがズラリ。この6×35の組み合わせをすべて試し、ベストカップルを決めようじゃないかという真剣勝負に、どうやら召集されたようだ。ヘパリーゼを買いそびれたことを、私は少し後悔した。

召集といってもチームメートは私の胃袋と肝臓だけであり、もっと言えば審判役も私の他には見当たらず、つまりこの「210番勝負」の行方は私の双肩、ないし双臓に委ねられているとのことだった。したがってここからは、完全無欠の独断と偏見で記事と杯が進むので、その点ご留意とご容赦を願いたい。

選手入場!(ウイスキー編)

さて早速の独断と偏見だが、ここで今回当方がチョイスした「日本代表」の6本を紹介しよう。メーカーの規模や蒸溜所のエリア分布、フレーバー、製法などが偏らないように、様々な角度からバリエーション重視で選んだつもりだ。

【サントリー白州】

サントリー白州

言わずと知れたサントリーの二大シングルモルトの一つ。蒸溜所は山梨県の山中にあり、南アルプスの天然水仕込みで生まれるフレーバーは一般に「爽やか」「軽やか」と言われる。だが口当たりの良さの中にもときおり煙たいピート香や甘いが酸味もある果実味などが混じって感じられ、ただ「線が細い」だけではないところをちょいちょい主張してくるあたりが、フクザツな思春期の少年のようでいじらしい。たまに大人っぽく、たまに甘酸っぱい、でも基本フレッシュ。

【ニッカ余市】

ニッカ余市

NHKの朝ドラ「マッサン」以降の人気で、一部では入手困難になりつつあるニッカの代表的シングルモルト。蒸溜所は北海道の海沿いにあり、本場スコットランドに非常に近い製造環境を国内でほぼ唯一確立している。味わいも日本人の好みに寄せるなど問答無用(と本当は竹鶴政孝も言いたかったはず)で、一切手抜き無しのスコッチ流を追求。アルコールの刺激がガツンと舌と喉に来る力強さが立つが、ソルティな磯くささの奥にバニラ的な甘味も抱えていて、重層&重厚。

【ニッカ伊達】

ニッカ伊達

ニッカの宮城峡蒸溜所「謹製」の限定ボトル。「カフェ式」という連続式蒸留機から生まれるモルト原酒とグレーン原酒をブレンドしている。香りも味も、まず立ってくるのはなんと言っても甘さ。クセの強さはさほどない。個性派俳優を脇に連れ颯爽と舞台に現れる二枚目の風格だ。ただその甘いマスクもアイドル的な軽快さではなく、「若いときはやんちゃしてたけどね」という落ち着きを備えている。濃いめのチョコのような、コクとボディ感のあるスイートネス。ザ・伊達男。

【マルス モルテージ 越百】

マルス モルテージ 越百

長野県の信州マルス蒸溜所は、日本の地ウイスキー界を代表する実力派。越百(こすも、と読む)はその人気銘柄だ。名は体を表すということなのか、味わいは小宇宙のように結構込み入っている。全体としては「甘い」の部類だが、その甘さの種類がべらぼうに多く、かつ各々とんがっている。ハチミツ的ななめらかさあり、キャラメル的な少々の焦がし感あり、甘酢的な低刺激ありと、どうにも舌が忙しい。かと思うと、シメでスモーキーフレーバーをかもしてくる。AB型か?

【イチローズ モルト&グレーン ホワイトラベル】

イチローズ モルト&グレーン ホワイトラベル

世界的な品評会でも受賞歴があり、愛好家に人気の「イチローズ」銘柄。このホワイトラベルは、埼玉県・秩父蒸溜所のモルトをベースに、他蒸溜所のモルトとグレーンの原酒を合わせたブレンデッドだ。矛盾するようだが「混ぜることで味の混じり気がなくなる(原酒同士が雑味を打ち消している?)」印象で、他の5選手に比べるとシンプル。「淡麗」という表現が近いかもしれない。抑制の効いたドライ&ビターテイストは、料理の種類を問わず相性が良さそう。汎用性の高さに期待。

【イチローズモルト ダブルディスティラリーズ】

イチローズモルト ダブルディスティラリーズ

「二つの蒸溜所」の名のとおり、埼玉県の羽生蒸溜所(2000年閉鎖)と秩父蒸溜所の原酒をブレンドした一本。秩父原酒はミズナラ樽由来の東洋的な香り(よく「伽羅や白檀のような」と枕詞が付く)だが、イメージの伝達は容易ではない。ざっくり言うと古いお寺や仏具店の感じ(独断)。渋みとともに甘さがあるが、クルミやナッツの油のようなまったり感が漂う。しかも、深く奥まっていて出てくるのに時間がかかる印象。このもたつきが奥ゆかしく魅力的。東洋的というか公家的?

以上「ウイスキーの部」選手入場。
「ツマミの部」は(2)で。