その日は嵐のような天気で、京急線・生麦駅から目的地まで歩く間に我々は雨と風になすすべもなく翻弄され、編集長Dの頭髪などはいつもより余計に禿げ散らかって、軽く遭難した人のような仕上がりとなっていた。
今にしてみればこれも、「嵐だけに」ということだったのだろう。
神奈川県横浜市鶴見区生麦。そう聞いてピンとくるのは、だいたい歴史好きか酒好きだ。歴史好きにとっては、その名も「生麦事件」の発生地である。どんな事件かは、まあGoogle先生にでも聞いてくれ。
そして酒好きにとって生麦と言えばキリンビール横浜工場だ。“嵐”でお馴染みのあのビールが作られ、工場見学後には試飲もできる、呑兵衛&呑み姫を引き寄せる魅惑の地。だいいち「生」と「麦」だ。ここにビール工場が無い方がおかしい。
「キリンビール」のブランドは、最初、横浜の山手で誕生した。1888年のことだ。その後1926年に、工場が生麦に移転した。それから90周年となった昨年には、工場見学の設備・演出がリニューアル。ということで編集部の面々で先日お邪魔してきたわけであるが、ここで話は冒頭の嵐のシーンに帰ってくる。
難破船のようにしてどうにか工場にたどり着いた一行は、約一名の散らかした頭のことをいじるのもそこそこに、意気揚々と工場見学(あるいは試飲というゴールへの旅)に出発した。
最近の工場見学は釜の中まで見える化されるらしい