【お酒のプロへの無茶ぶり延長戦】バッカスの選択スピンオフ商品「ミズナラスティック」の実力チェックをソムリエさんにお願いしてみた

編集長Dである。突然だが、皆さんは「ミズナラスティック」をご存じだろうか。そう、このサイト「バッカスの選択」から派生的に(酔った勢いの思い付きを我々は「派生的」と称する)誕生した、ウイスキー熟成アイテムである(ドヤッ)。

ただの棒きれじゃないかって? はいはいはいはい、その指摘は正しい、我々はそれを否定しない。ほんとに棒だから。だがな、これはただの棒ではない、“ミズナラの棒”だ。

ジャパニーズ・オークとも呼ばれるミズナラは、国産ウイスキーの貯蔵に長く使われてきた日本特有の樽材。スコッチをはじめ他の国のウイスキーとはひと味違う個性を生み出すものとして世界的に注目を集めていて、シーバスリーガルなんかもミズナラ樽の原酒を使ったオリジナルブレンドを出している。

そんなミズナラの木をカットして作ったミズナラスティック。何に使うのかといえば、これをウイスキーのボトルにツルッと投入し、放置する。ただ放置、以上だ。

するとそれだけでボトルの中のウイスキーにミズナラのフレーバーが移り、風味が変わる。これを我々は“棒熟成”と呼び、毎回この奇跡に立ち会うたびに目には見えない偉大で崇高な力の存在を感じ、畏敬の念を抱くのである(フォースと共にあれ)。

だがこの奇跡にも一つの問題があった。あるとき我々編集部はそれに気づいてしまった(もちろんお家芸である「見て見ぬふり」でやり過ごそうとしたが、そうもいかなかった)。

奇跡と呼んでいるものが、結局のところ“素人の主観”でしかない、……という問題である。

ミズナラスティックの奇跡を実証するには?

ミズナラスティックの効果については、編集部の人間も、その友達も、その友達の友達も、だいたい「ああ!変わるね!うまいね!」と反応し、そのリアクションの積み上げをもって“棒熟成”の根拠としている。

だがお気づきのとおり、そうしたリアクションを高度3万フィートまで積み上げたところで、それは全て“素人の主観”なのである。なんとなく根拠としては脆弱性をぬぐい去れない。

そこで道は二つ。一つ目はもちろん、客観的な基準で効果を測定することだが、科学のメスを入れるような潤沢な予算は我々にはない(あったとしても酒代に消える)。

もう一つの道は、“素人の主観”を“プロの主観”にすればいいじゃないか、というもので、これならば同じ主観でもだいぶもっともらしくなる。そう、人は愚かなもので“もっともらしい”ということにめっぽう弱い。そして編集部の愚かな面々ももちろん弱い。

ということで、ミズナラスティックをボトルにツルッと突っ込んだウイスキーをプロに試してもらおうということになった。白羽の矢を立てられてしまったのがこの方、藤牧和哉氏である。

いつもは銀座のバーに立たれているソムリエさんだ。正真正銘、徹頭徹尾、完全無欠の酒のプロである。前の前の記事前の記事にて、500円以下のワンコインワインをテイスティングする企画にご協力いただいた。そのご厚意に悪乗りし、引き続き身柄を拘束して、今度はウイスキーを寸評してもらう。……何という厚かましさ!

おそらくこの編集部の連中は、京都人に「ぶぶ漬けでもどうどす?」と言われても立ち去ろうとしないどころか、全く空気を読む気配すら見せず、「ああ、ぶぶ漬けいただきます!これにもお酒、合いますかねえ?」などと天真爛漫に傍若無人をはたらくことだろう。

……やれやれ、といった次第であるが、ともかくも藤牧氏にぶぶ漬けならぬ、ミズナラスティック漬けのウイスキーを試していただいた。

ミズナラスティックの効果はいかに?

今回用意したのはニッカの「ブラックニッカ」と「竹鶴」、そして写真にはないがサントリー「角」。

まずは「ブラックニッカ」をトクトクトク……。

グラスの香りをかいで、藤牧氏曰く「ああ、もう違いますね。ミズナラの香りがちゃんと乗っています」

はい、いただきました。諸君、お分かりだろうか、変わるのだよ、本当に。

さらに口に含んで曰く「スモーキーさよりもバニラの感じ。でも甘々というわけではなくて、内側をチャー(火入れ)で焦がしたばかりの新樽でよく出るような、ちょっと焦げ感のあるビターな味わいも少し感じます。スティック無しのものとは、一口で変化がわかります。ブラックニッカがちょっとランクアップしますね」

いやもう有難きお言葉で、恐縮っす。恐縮ついでに、今度は「竹鶴」を……トクトクトク……「これはですね……、変わってるには変わってるんですが……、先にブラックニッカを飲んでしまったからかもしれませんが、比較的変化の度合いは小さいように思います。一口飲んで『おおっ』とはならないかもしれません」

あれま、でもフォローもしっかりいただいた。「たぶん竹鶴は元々完成度の高いお酒なので、ミズナラスティックを入れて良い効果が出ているとしても、そこまで大きな差として感じられないのではないでしょうか。ただ数口飲んでじっくり味わえばやっぱり変化がわかるので、そういう微妙な違いを楽しみたいという上級者にはいいかもしれません」

なるほど、どちらかというとリーズナブルなウイスキーの方がはっきりとした変化を楽しめる、ということかな? では最後に「角」をどうぞ、トクトクトク……「ああ、やっぱり変わりますね。角はハイボールとの相性が良くて、ちょっとライトな飲みやすさがあると思うのですが、それだけにニッカよりも変化が大きく感じられる気がします。より重みというか味に深みが出る印象ですね。ただ『気軽に飲みやすいところが角の良さ』という方は、スティックを入れてしまうとちょっと違和感があるかもしれません」

ということで、3本試していただいたが、それぞれにミズナラスティックによる変化の違いがあり、楽しみ方、付き合い方がいろいろと考えられそうだ。皆さんもいろんな銘柄で“棒熟成”にトライしてみてほしい。スティックはこちらでゲットできる。

そして記事3本にわたって長々お付き合いいただいた藤牧氏に盛大な拍手を。サンキュー、メルシー、謝謝、あざーす!