まだまだ夜になると肌寒い日がある。そんな時、ふと、おでんが恋しくなる。出汁がよく染み込んだ熱々の種を、ハフハフしながら食べ、冷酒をキュッといく。「大人になって良かった」、そう思える瞬間だ。
黒ハンペンにだし粉・青のり
全国どこででも食べられるおでんだが、地域色が表れやすいメニューでもある。大きいところでは、濃い出汁の関東風に、薄味の関西風。これは多くの人が知るところだろう。そのほか、その地の名産品が種として入るなど、地域ごとに鍋を彩る食材はさまざまだ。
今宵の日本酒のアテは何にしようか。歩きながら考えているところで、白羽の矢が立ったのは「静岡おでん」だ。前述したように、地域ごとに特徴がある中で、「黒いつゆ」「黒ハンペン」「だし粉・青のりをかける」というのが静岡おでんの特徴と言われている。特に、だし粉・青のりを振りかけると出汁の風味が一段と強まり、海の地・静岡を想起させる。
磯のものには磯の酒を
静岡おでんの特徴の1つである「黒ハンペン」だが、これはサバを骨ごと砕いてミンチにして作られているために黒くなるという。だし粉、青のり、黒ハンペンなど、磯のものたっぷりの静岡おでんに合わせるのは、静岡の地酒で焼津に蔵を持つ「磯自慢」だ。
淡くフルーティーな香りが楽しめる辛口の磯自慢にはどんなつまみでも合うが、やっぱり磯のものがぴったりくる。そこで、たこわさびならぬ、つぶ貝わさびを追加した。コリコリとしたつぶ貝をひと噛みするごとに、磯風味が口の中に広がる。そこに、キリっとした磯自慢を流し込と口が磯風味でいっぱいになる。
日本酒にはやはり、海のものがよく合う。酒とつまみの「磯しばり」。ぜひ試してもらいたい。