千葉外房の御宿は、太平洋の波が洗う海岸が広がる地。童謡「月の砂漠」の記念像が砂丘の先の海を見つめています。
「月の砂漠」は、1923年に「少女倶楽部」に載った詩人・加藤まさをの詩に引き付けられた、作曲家・佐々木すぐるが曲を付けた童謡です。佐々木は全国600校に及ぶ小学校を行脚して、音楽教員に講習会を行いました。その甲斐もあって、多くの人に歌われ始めたのは、当時皇太子であった今上天皇誕生の1933年。歌詞の一節「先のくらには王子さま」と皇太子様が重なったためと言われています。
作詞の加藤は往時、竹久夢二と比肩する詩人。結核の療養でたびたび御宿を訪れていました。結核の療養にはサナトリウムと呼ばれた療養所が新鮮な空気とお日様のある高原や海岸に設けられ、御宿も療養地のひとつとされていました。
月の夜、砂漠をとぼとぼと歩く2頭の対のらくだ。幻想的です。御宿の酒造所「岩の井」では「月の砂漠」という銘柄も出していますが、本日のおすすめは吟醸酒「星の夢」です。
ご存じの通り、吟醸酒は本醸造と同様にアルコールで調整しています。純米志向の、混ざりモノを嫌がる向きにはダメなのかも知れませんが、蔵人の手腕の妙味が楽しめるような気がします。
岩瀬酒造株式会社
千葉県御宿町久保1916
http://www.iwanoi.com/index.html
※「星の夢」は現在限定の銘柄となっており、同社の吟醸酒としては「ぎんから」という銘柄が一般に販売されています。
「星の夢」に何を合わせようかと近所のスーパーマーケットへ。鮮魚売り場にイカのエンペラとゲソだけが売っていたのを見て、胴体よりもこの部位が好きなので、うううっとほくそえみました。
さて、イカには何か野菜を合わせようと見つけたのがロメインレタス。レタスと言えばボール状ですが、これは縦長。葉に厚みがあってシャキシャキ感が絶品です。
ロメインとはローマの意味。エーゲ海のコス島が原産で、ヨーロッパからアメリカに広まり、アメリカではサラダの定番野菜となっているとか。今やどこのファミレスにもあるシーザーサラダは、メキシコ人のシーザー・カルディニさんが考案したロメインレタスを使ったサラダです。1924年7月4日と日付まで分かっています。まさにシーザーサラダ記念日です。
そんなロメインレタスとイカをマヨネーズ炒めに。作り方は簡単。
吟醸酒「星の夢」はほど良く角が取れて飲みやすい味わい。グイグイいけてしまうので、飲み過ぎ注意です。常温が良さそうです。
そして予想通り、マヨネーズ炒めがよく合いました。マヨネーズとからまっていっそう甘さが引き立ったロメインレタスと、お米の丸みのある味が口の中に広がる「星の夢」。一緒に味わうと、実にまろやかなマリアージュを楽しませてくれます。
大正浪漫の時期に作られた童謡「月の砂漠」。歌詞に出てくる金のくらには「岩の井」のお酒が、銀のくらには「ロメインレタス」が載っていたとしたら、なんと素敵な情景でしょう。