【あの銘柄は「ミズナラ枡」でどう変わる?】ウイスキーを枡で飲み比べ(1)ジャパニーズウイスキー編

いつもお世話になっており枡。編集長Dです。「バッカスの選択」」公式スピンオフ商品、我らがウイスキー専用酒器「ミズナラ枡」。クラウドファンディングにてついに出資目標額500%越え、ご支援額にして100万円突破を果たしました~!

……といって、特にメダルとかいただけたりするわけでもないので、本日も粛々と水曜日恒例のこちら、「ま」いしゅう「す」いようびは「枡の日」ということで「ミズナラ枡」情報を発信してまいり枡。はい。

キャラの違う3本で検証

今回は「ミズナラ枡」で実際にウイスキーを飲むとどうなるのか、銘柄ごとの味・香り・キャラの変化、その傾向を考察してみたいと思います。まず今週はジャパニーズウイスキー部門。ミズナラの樽でウイスキーの原酒を貯蔵するなんていう魔法を世界に先駆けて考え付き、実行した、日本生まれの銘柄を枡で飲んでみましょう。

ご登場いただくのはこのお三方。

右からサントリー「山崎」、ニッカ「余市」、本坊酒造・マルス信州蒸溜所「マルス モルテージ 越百」。

なるべくキャラがかぶらないように、味わいの方向性の違う3本をチョイス。それぞれの個性が「ミズナラ枡」の中でどうなるのか、ああなるのか、こうなるのか……。その変化は通常のテイスティンググラスに注いだものとの比較で検証します。

では早速1本目、「山崎」さんから。

「山崎」×「ミズナラ桝」は、まあ“シブい”

シブくなる「山崎」

サントリー「山崎」。まず普通にグラスでいただきますと、あのお馴染みの穏やかで、しかし複雑で、奥深い、筋金入りの京都人みたいな味わいが口の中に広がります。

そして鼻に近づけたときにフワッと立ち上る、華やかな香りも「山崎」を特徴づける要素ですね。

それを、into the「ミズナラ桝」。

まず変わるのは香りですが、香りの性質そのものが変わってしまうわけではありません。ただ距離が離れるというか、ちょっと遠いところに何歩か下がるというか、奥まった場所から漂ってくる感じに思えます。それにより華やかだった香りが少しミステリアスに、深遠な雰囲気を帯びますね。

味も相変わらず複雑ではあるのですが、華美な要素は控えめになって、全体に素朴な印象。どちらかというと甘さが立ってくる感じもありますが、これも洋菓子よりは和菓子を思わせる甘さ。

「山崎」×「ミズナラ桝」は、まあ“シブい”という感じですかねえ。華やかな京の都を少し離れて、鄙びた里にあえて閑居するわび・さびの境地と言いますか。もののあはれ、ですなあ。

「余市」×「ミズナラ桝」は“別の顔”

別の一面を見せる「余市」

続いてニッカ「余市」。グラスで飲むとまず感じるのは塩味、スモーキーなフレーバー。その後遅れてバニラ的な甘さがジワッと出てきます。うまいっす、相変わらず。

こちらもinto the「ミズナラ桝」。

面白いのは、香りがいったんフラットになるというか、比較的強めに出ていた磯くささ、煙くささの突出感がならされます。枡自体が発するミズナラ材の香りが、むしろ一番嗅覚には響いてきますね。んあ~、かぐわしい~。

で、香りがフラットになると何が起こるか、というと、普段はスモーキーフレーバーの陰に隠れているスイートネスが、一気に前面化してくるんですね。「余市」は通常、その力強い味わいでグイグイ攻めてくるんですが、それに覆われているもう一つの顔、甘い表情があるわけです。そのご尊顔をベール無しで拝むことができる、そんな感じでしょうかね。

「余市」×「ミズナラ桝」は“別の顔”。いつもは寡黙で男くさいあの上司も、家に帰るとやっぱりパパなんですねえ、というような別の一面、別の表情。「ミズナラ桝」でウイスキーが変化するギャップ、落差にわかりやすく萌えたいなら、「余市」みたいなのがうってつけではないかと思います。

「越百」×「ミズナラ桝」は“黄昏”

いい具合にくたびれる「越百」

最後はこの方、マルス信州の「越百」。インディーズ系の蒸溜所でつくられる個性派。「越百」と書いて「こすも」です。ちょいキラキラです。しかし味わいはギラギラです。ちょいワルです。

グラスで飲むと、まあキャラの濃い、ドスのきいた香り。芳醇にして豊潤なモルト由来の穀物味がビロードのように広がります。絢爛豪華、色でいうとゴールド、季節でいうと真夏、戦国武将でいうと豊臣秀吉、押してダメならもっと押せというような、ド派手なオペラを見ているような、もう満漢全席フルコースに匹敵する存在感、圧力ですね。

それを、into the「ミズナラ桝」。

するとあら不思議。まるくなります。ギラギラしていたちょいワルオヤジが、絶妙にいい具合でくたびれます。完全に晩年の秀吉、すっかり子煩悩になってしまった太閤殿下ですね。非常に口当たりがまろやかに、飲みやすくなります。

が、まるくするだけで、息の根までは止めないのが「ミズナラ桝」の包容力。最初は牙が抜かれてしまったかに思えた「越百」の強い個性、しっかりしたモルトの香りやキャラメルを焦がしたようなクセのある甘さが、口に含んでから遅れて到来します。このクドいまでのしぶとさがまたいいですねえ。

「越百」×「ミズナラ桝」は“黄昏”ですかねえ。ギラギラに輝いていた太陽が落ちていくんだけれども、最後に意地のもうひと輝き、全天を真っ赤に染め上げながら沈んでいく。一見弱々しくなったようで、実は最もその個性が色濃く出る瞬間。それが楽しめる気がします。これも「ミズナラ桝」マジックでしょうか。

ということで三者三様のメタモルフォーゼでした。この傾向を参考に、皆さんもウイスキーinto the「ミズナラ桝」を楽しんでみてください。

【来週の水曜「枡の日」は……】

あの銘柄は「ミズナラ枡」でどう変わる?ウイスキーを「ミズナラ枡」で飲み比べ(2)スコッチ・シングルモルト編 を配信予定です。お楽しみに!