日本のウイスキー6本×ツマミ35種の組み合わせを総当たり戦で全査定する、独断と偏見の「210番勝負」。（3）～（8）では各銘柄でベストマッチに輝いたツマミをカウントダウンしていく。今回は「ニッカ余市」編だ。 ※ウイスキー6本とツマミ35種は（1）（2）で紹介している。
たまに誤って一口パクッとやってしまうと、たちまち全身の水分が持っていかれる。そんな通過儀礼を我々に与えてくれるアンチョビだが、その強烈な塩気にも余市は全くひるまない。ヘビーで豪胆なフレーバーによる互角の戦いは、やがて煙たくも美しい均衡に結実する。
おすすめは、味付け無しの「そのまんま」。まずは余市を（ストレートで）一口。強い刺激とソルティな風味が味覚に残った状態で、だし巻きをいただく。するとシンプルな玉子の甘味に適度な塩気が混じり、ちょうど「しらす入り」のあの感じが再現されるのだ。美味至極。
辛を以て辛を制する、だ。他の銘柄5本も試したが、やはりらっきょうの繰り出すドライなパンチに負ける。唯一機敏な反応からカウンターを打ち込んできたのが余市だった。しかも相手のツンツンしたとんがりを、そのまま抱き込む寝技まで披露する。北の巨人、恐るべし。
余市はとにかく「負けない」。しょっぱい、脂っこい、くさい、辛い……などが束でかかって来ても、顔色一つ変えないで首根っこを押さえる余裕がある。くさみがインフレを起こしている「スモークドオイスターのオイル漬け缶詰」やテリッテリの「ソーセージ」は劇的にハマる。蒸溜所が海沿いにあるためか、「鮭とば」とは海の男同士で意気投合した。一方、港町に流れ着いた色白の女みたいな「冷奴」には、塩気を分けてやる優しさも見せる。磯くさいドカジャンを、細い肩に無言でかけてやるように。
続いては（5）「ニッカ伊達」のベストマッチへ！