グッとくる苦み&スッと入って抜ける飲み口を「いいとこ取り」
さあ! そして、まもなく6月21日に発売となるシリーズ最新作が、「Craft Label 香り踊るジャグリングIPA」。IPAというのは、クラフトビールの中でもホップの苦みをガンガンに利かせた種類で、特にアメリカ発信で人気があり、マニアの間にはこのIPAにハマった激辛好きも存在します。
「IPAは追いかけるとかなりマニアックな世界なんですよ(笑)。ただ今のクラフトビールの盛り上がりをけん引している“代表格”でもあるので、『Craft Label』でもいつかは出そうと思っていましたね」
おお、マスターが長く温めていた作品というわけですね。これは期待が膨らみます。では、どんな激辛が襲ってくるか、覚悟しつつ……、チビ、チビチビ、ん? ゴクゴク、おや? 飲みやすいですよ? ゴクリゴクリ、うまい! これは一体……。
「だいぶ飲みやすい仕上がりになっていると思います。本来はガツンと苦いIPAですが、これは心地よい飲み口で『あ、確かに苦い、けどイケるね』とエントリー層が思えるようなテイスト。もちろんIPAならではのグッとくる苦みはしっかり楽しめます。だけど、いつまでも苦みが残らないように。“スッと来てスッと消える”ように。味覚に馴染んでいくIPAを目指しました」
これまでの2本に比べるとボディ感がしっかりあります。でもそれがズッシリ感にならないのは、華やかな香りが次々と現れる嗅覚の楽しさがあるからでしょうか。「香り踊るジャグリング」とは、言い得て妙です。
なんでも、苦みを出すためのホップ以外に、香りだけを付けるホップ、香りと苦みを付けるホップ、という3種類のホップを使用しているのだとか。日本、アメリカ、チェコ、と世界中のホップから吟味した3つだそうで、途方もない労力の跡がうかがえます。しかしIPAの苦さとエントリー層に向けた飲みやすさを両立するには、他にも想像を絶する試行錯誤があったのでは?
「どういうホップを使うか、どういう配分で合わせるか、製造過程のどのタイミングでホップを入れるかで、最終的に感じられる苦みのニュアンスは変わります。何度も仮説を立てては試験を繰り返し、私たちの知見、技術を総動員してレシピを固めていきました」
「通常は仕込と言われる、麦汁を作る段階でホップを入れるのですが、煮沸するときに香りがかなり飛んでしまいます。そこで今回は、仕込のあとに麦汁を冷やして発酵させるタイミングでホップを再度添加する『独自のドライホッピング製法』を採用しました。初めて取り入れた技術で、工場設備も一部改良するなどのチャレンジでしたが、なんとか香りの成分をよりダイレクトに引き出すことに成功しました」
クラフトビールならではの個性の強さと、日常的に飲み続けたくなる親しみやすい味わいの「いいとこ取り」は、やっぱり一筋縄ではいかないのですね。我々ただの呑兵衛&呑み姫には想像もつかない、ピンポイントのさじ加減をめぐる格闘が日夜続いていたわけで。その司令塔として醸造をまとめ上げた新井さんは、もはや完全無欠の「マスター」なのでした。いやもう新井さんのいる方角に足を向けて「Craft Label」は飲めません。
さて、クラフトビール初心者にこそ楽しんでほしい「Craft Label」。その魅力は“普段の家飲みでもいけちゃうクラフト”というところにあるわけですが、次の最終回・エピソード(3)ではペールエール・ヴァイツェン・IPAの多彩な風味をそれぞれもっとおいしく楽しむためのアレやソレをご紹介します! ということで新井さん、麦とホップが渦巻く銀河のジェダイマスターとしてもう少しお付き合いのほど、よろしくお願いいたします!