「あの、いつものビール」とは違うけど、違い過ぎない
クラフトビールというと、味も香りも色も国・地域もべらぼうにバリエーションがあって多彩というのが最大の魅力ですが、それだけに一つひとつのキャラが濃く、ときには濃すぎて面食らうこともあったりします。もちろんそれはクラフトビールの楽しさの一つで、マニアックに好きな人たちはその強烈な個性に夜な夜なシビレているわけですが、日本でお馴染みの「黄金色でノド越し爽快なアレ」に慣れてしまったごく平均的な呑兵衛&呑み姫にとっては、なかなか「日常的に飲むお酒」にはなりにくい存在かもしれません。
そこで「Craft Label」は、クラフトビールの個性はしっかり残しながらも定番ナショナルブランド的な“親しみやすい味わい”と“安定した品質”を提供するという、「いいとこ取り」を目指して誕生しました。まさに、クラフトビール初心者にこそ楽しんでほしい家飲み缶なのです。
その第1弾として昨年発売されたのが、「Craft Label 柑橘香るペールエール」。シリーズの1発目にペールエールを持ってきたのには、何かワケがあるのでしょうか。新井さん、教えてください!
「初めてクラフトビールを飲む方も違和感なく楽しめる味わい、というのが大きいですね。日本でビールというと黄金色のピルスナータイプですが、その“延長線上”で味わえると思います。もちろん違いはありますが、普段飲んでいるビールとまったく違う、というよりも『あ、なんか違うな』というぐらいの個性の強さ、ちょうどいい距離感を狙いました」
おそらくマスターブリュワーにしかできない、絶妙なポジション取りではないでしょうか。その職人技に既にうなりつつ、編集長D、早速ペールエールを口に運んでみます。と、口にする前にまずやって来るのは、香り、いい香り! これはフルーティーですね。
「柑橘系の香ばしさがまず立ってくるのが、このペールエールの第一印象になります。秘密はフレーバーホップ。伝統的なホップはさわやかな香りですが、近年新しく育種されてきたフレーバーホップは、グレープフルーツやパッションフルーツ、レモンを思わせる華やかで変化のある香りが特徴です」
確かに嗅覚で感じる分には、いつものビールとは明らかに違う個性ですね。ではお味はと言いますと、ゴク、ゴクゴク、ゴクリゴクリ、プハーッ! おっと失礼。しかし、最後にプハーッといきたくなるノド越しの気持ちよさがしっかりありますね。
「味わいに関しては、飲み飽きないバランスの良さにこだわりました。苦みは抑えめで、甘味も少しあって。どれか一つの味だけを際立たせることはしていません。ピルスナータイプの“延長線上”にあるためには、この長く親しめる味のバランスがカギです。ただ、プハーッ! というよりは、じっくり味わって飲んでいただきたいですね(笑)」
普段飲んでいるビールと似た部分もありながら、はっきりとした違いも出せているペールエールは、クラフトビール愛飲者の間口を広げるには適任のトップバッターだったわけですね。