【こんなクラフトビールを待っていた】初心者にこそ楽しんでほしい「家飲みクラフト缶」のマスターブリュワーを直撃!(1)

いきなりですが質問です。皆さん、ビールというと、どんな「お酒」をイメージしますか? とりあえず1杯目? はいはい。風呂上りにキンキンに冷えたのをグビ飲みする? はいはいはい。ヘトヘトに疲れた仕事終わりにコンビニで買ってきてプシュッ? はいはいはいはい。とにかくキレのある爽快感をノドに流し込みたい、気持ちのいろいろをリセットしたい、味のことは正直あまり気にしてない、それが「あの、いつものビール」であることが重要?

皆さん、それ、もったいないです。大事なのでもう一回言いますよ、「もったいない」です。……ということが、今回ある方にお会いしてよくわかりました。その方とは、クラフトビールの魅力の伝道師にして、醸造の司令塔、麦芽とホップが渦巻く銀河におけるジェダイマスター(そして実際に「マスター」)なのです!) いやもう、編集長D、家飲みビールの概念がコペルニクス級にひっくり返りましたよ。自分の胸の中にはとてもしまっておけないので、今回は特別大放出祭りといたします。

普段飲みのビールを一変させる野望は、しかしムズカシイ

普段飲みのビールを一変させる野望は、しかしムズカシイ

冒頭、多少あおり気味でしたかね。改めてきちんと(?)ご紹介しましょう。今回お話しを伺ったのは、クラフトビールの缶シリーズ「Craft Label(クラフトラベル)」を手掛けるジャパンプレミアムブリュー株式会社の、社内にたった一人しかいない「マスターブリュワー」新井健司(あらい・たけし)さん。「Craft Label」はペールエールとヴァイツェン、そして6月21日発売の新商品IPAという多彩な風味を楽しめるのが魅力の、新しいクラフトビールブランドです。

ところでこの「クラフトビール」、ここ数年ブームがきていますが皆さんは飲んだことありますか? 日本では伝統的にビールといえば黄金色でノド越しスッキリの「あの、いつものビール」なわけですが、実はあれは世界的に見れば数あるビールの中の「一種」でしかありません。

本場のヨーロッパでは色も様々、味も様々、香りも様々のビール(中には、これほんとにビールなの?というものも)が昔からいくつも飲まれていて、近年その「作り手の数だけビールがある」的な手作り感の面白さに目覚めたアメリカのブリュワリーがどんどん新しいビールを出して、北米でドカンと盛り上がったのがクラフトビールブームの始まり。それが今、日本にもジワジワ、シュワシュワ、グビグビと上陸してきているわけ、で、合ってますよね、新井さん。

「クラフトビールは海外に行くと本当によく出会うので、現地で飲んでその魅力を知る人も多いと思います。国内でもクラフトビール専門のお店が増えていたり、飲み比べのイベントが開催されていたりと、何かと遭遇することはあると思うのですが、本当に浸透しているとはまだ言えません。マニアックにのめり込む人はいますが、ライトユーザーに間口が広がっていない。家で普段飲みするお酒の選択肢に、入ってないですよね?」

ぐぬぬ、確かに、ビアフェスなんかに行くと「うまいうまい!」と言って飲んでるくせに、いざ帰り道のコンビニに寄ると「あの、いつものビール」を手に取ってしまいますね。んー、なんでだろ?

「クラフトビールについて、特にライトユーザーが感じているストレスの一つは、品質にばらつきがある感覚だと思うんです。飲むたびに味が違って感じられるというか。クラフトビールは文字通り手作り感のある小規模生産が主体なので、風味のばらつきはむしろ個性や魅力なのですが、ライトユーザーにはそれが長所と受け止められないんじゃないかと」

確かに、よほどのマニアでもない限り「あれ、なんか思ってた味と違うな」となったら次はない、って思っちゃいますよね。

「とはいえ個性を打ち出すことも大事で、最近のユーザーの価値観は“みんなが飲んでいるものを飲む”から“みんなとは違うもの、新しいものを珍しがって飲む”に変わってきています。特に若い人にとってビールは、ともすれば“ありきたりな酒”になってしまう。だからクラフトビール本来の個性の強さ、味わいの多彩さをしっかり出すことは、そうした価値観にはハマっているはずなんです」

まあ、我々呑兵衛&呑み姫ってのはワガママなもんですから。「なんかいつもと違う面白い酒をよこせ!」「これいつもと違い過ぎるだろ、いつものをよこせ!」「いやいつものじゃつまらんだろ、違うのをよこせ!」「いやこれ……」とエンドレスで、ほんとスミマセン。

クラフトビールとナショナルブランドのいいとこ取り?

クラフトビールとナショナルブランドのいいとこ取り?

そんな我々ユーザーが「まず飲む」プラス「次も飲む」ようなクラフトビールを作る。そうして「あの、いつものビール」ではない、世界のいろんなビールの魅力を知ってもらう、楽しんでもらう、経験してもらう。それが新井さんのミッションです。やはり伝道師なのです!

「まあ難しいですよ(笑)。どこかとんがってないと個性とか新しさは出せませんが、とがらせればとがらせるほど、一部の人にしかハマらなくて、間口が広がらない。そのバランス、たくさんの人が“2回目”に進む味わいに辿り着くのが難しいですね」

そこでブレークスルーとなったのが、あのナショナルブランドの存在。「Craft Label」を販売するジャパンプレミアムブリューは、サッポロビールを親会社に持っており、製造も同社の那須工場で行われているのです。

「ライトユーザーが気にするクラフトビールの味わい・品質のばらつきについては、サッポロビールが大規模生産の中で蓄積してきた知識、技術力を注ぎ込むことで解消できます。“親しみやすいおいしさ”を安定して生み出してきたノウハウを、クラフトビールのジャンルにも活かすことで、個性をしっかり出しながらも一度飲んだ人が離れていかないクオリティーを両立したいと考えています」

サッポロビールといえば、日本のビール文化を様々な形で創造してきたフロントランナー。そのDNAをも投入して生まれる「Craft Label」は、個性的なクラフトビールと親しみ&安定感のナショナルブランドの“いいとこ取り”なわけです。

「そのポジションを私たちは“ナショナルクラフト”と呼んでいます。味や香りのはっきりした違い・特徴に、安定した品質をプラスすることで、クラフトビールのエントリー層に一番ぴったりくる“入り口”になっていけたらと思っています」

定番として長く付き合えるクラフトビール、といったところでしょうか? なんだか新しいですね。これが多くのユーザーに知られ、飲まれていけば、やがてブームを超えて日本の次なるビール文化になっていくのかもしれません。いやさすが「マスターブリュワー」、クラフトビールの伝道師です! ……と、気づけば、あら、そこそこの文字数ですね。

皆さんお待ちかねの「で、どんな味わいなんだ『Craft Label』ってぇのは」については、(2)でレポートします。新井さんの、「醸造の司令塔」としての奮戦ぶりにも、バッシバシ迫っていきますよ! ええ、引っ張ります、引っ張りますとも。スターウォーズ並みにエピソードを重ねます。こちとら麦とホップが渦巻く銀河の話ですからね、負けちゃいらんねぇわけで、ええ。