ミズナラスティックの効果については、編集部の人間も、その友達も、その友達の友達も、だいたい「ああ!変わるね!うまいね!」と反応し、そのリアクションの積み上げをもって“棒熟成”の根拠としている。
だがお気づきのとおり、そうしたリアクションを高度3万フィートまで積み上げたところで、それは全て“素人の主観”なのである。なんとなく根拠としては脆弱性をぬぐい去れない。
そこで道は二つ。一つ目はもちろん、客観的な基準で効果を測定することだが、科学のメスを入れるような潤沢な予算は我々にはない(あったとしても酒代に消える)。
もう一つの道は、“素人の主観”を“プロの主観”にすればいいじゃないか、というもので、これならば同じ主観でもだいぶもっともらしくなる。そう、人は愚かなもので“もっともらしい”ということにめっぽう弱い。そして編集部の愚かな面々ももちろん弱い。
ということで、ミズナラスティックをボトルにツルッと突っ込んだウイスキーをプロに試してもらおうということになった。白羽の矢を立てられてしまったのがこの方、藤牧和哉氏である。
いつもは銀座のバーに立たれているソムリエさんだ。正真正銘、徹頭徹尾、完全無欠の酒のプロである。前の前の記事と前の記事にて、500円以下のワンコインワインをテイスティングする企画にご協力いただいた。そのご厚意に悪乗りし、引き続き身柄を拘束して、今度はウイスキーを寸評してもらう。……何という厚かましさ!
おそらくこの編集部の連中は、京都人に「ぶぶ漬けでもどうどす?」と言われても立ち去ろうとしないどころか、全く空気を読む気配すら見せず、「ああ、ぶぶ漬けいただきます!これにもお酒、合いますかねえ?」などと天真爛漫に傍若無人をはたらくことだろう。
……やれやれ、といった次第であるが、ともかくも藤牧氏にぶぶ漬けならぬ、ミズナラスティック漬けのウイスキーを試していただいた。