紹興酒を料理と合わせる、さらに料理に“使う”超絶テク
ではいよいよお待ちかね、名店の味とお酒のマリアージュのお時間です。甕出しのおいしい紹興酒にはどんなメニューが合うのでしょうか。
「熟成年数が長く、風味のしっかり出ている紹興酒にはやっぱり味の濃いもの、トウチ(黒豆を発酵させた調味料)や胡椒の効いた料理は合わせやすいですね。発酵した素材のタレとか、トロッとした餡とか、こってりしたものにはすごくマッチします。3年物など軽めの紹興酒には、塩味であっさり炒めたメニューも馴染みます。食材は肉でも魚でも、特に選びません。味付けで合わせていく感覚ですね」
ということで、まず登場したのは「黒毛和牛のブラックペッパー炒め」。
シンプルな味付けながら、それだけに胡椒の香りと辛さがピリリと立ってくる一皿。これは5年物の紹興酒が合う感じがしました。8年物に比べて香りがパキッと出てくるので胡椒に負けない強さがあり、シンプルなお料理にしっかりと風味をプラスしてくれます。後味がスッと消えていく切れの良さで、肉の旨味も一段と引き締まりますね。
お次はこちら、「ヤリイカの自家製XO醤炒め」。
貝柱をベースにしたソースで、深いコクと甘味がまろやかに広がっていきます。こちらは8年物でしょうかね。5年物よりも香りが抑えられた印象で、海鮮特有の潮の風味を邪魔しません。そして後味にかけてじわじわマッタリと存在感を出してくるもち米の丸みのある風味が、貝柱ソースの濃密感と一体化して何とも言えない幸せな気分にしてくれます。
トリを飾るのは、南国酒家さんに来たらぜひ頼みたい名物料理、「かにの玉子入りふかのひれ」。
鶏、豚、野菜などで取った極上のダシに、ふかひれ、タラバガニの身、ズワイガニの卵を入れ、とろみを利かせてスープ状にしています。濃厚です。口の中をなめらかに満たしていく旨味がたまりません。甕出し紹興酒のマイルド&ディープな味わいが見事にハマります。そしてここで社長から耳より、いや舌よりな情報が……。
「これを半分くらい食べたら、残りの半分に紹興酒をちょっと垂らしてみてください。グッとコクが出るというか、味がもっと丸くなるというか、料理の特徴がいっそう引き立つんですよ。これは皆さんにぜひおすすめしたい、非常に乙な楽しみ方なんです」
試してみると……、いや、ほんと、すごいです。
まず紹興酒の香りが加わることで、味わいに俄然奥行きが出ます。さらに、アルコール分の華やかなフレーバーに引き上げられるようにスープの甘味が一気に前面に出てきて、味全体が1オクターブ上がる感覚がありますね。紹興酒を入れるビフォーアフターでは結構変わります。それでいてビフォーもアフターもそれぞれに美味至極。これは次回からもやっちゃいますね。「プロに聞いたんだけどさ……」とドヤ顔で。