こうして生み出される南国酒家さんのお料理は、より日本人に馴染みやすい、すんなり口にして楽しめるものばかり。鮮度が良く安心安全な国内の素材をふんだんに使い、たとえば中国ではしっかり火を通すのが“セオリー”の野菜も、臨機応変に生やさっと炒める程度でシャキシャキの歯ごたえとともに提供。慣習にとらわれることなく、日本の食材を最大限に楽しめる味わい方を提案しているわけですね。
ところで、中華というとターンテーブルのある円卓をみんなで囲んで、というイメージがありますが、大人数でないと行っちゃいけないんでしょうか……、社長、2~3人じゃだめですか?
「確かに昔は大勢での利用が多く、料理の分量も1皿3~4人前が普通でした。しかしお客様の志向も変化して、今では2名様で来店される方も非常に多い。ですから料理も少人数向けのものを用意しています。2名で来ていただいた方にも、やはり4~5品のメニューを楽しんでいただきたいですからね」
2人で行ってエビチリを頼んだら、各人エビを十何匹も食べることになってそれだけでお腹いっぱい……とか、悲しすぎますからね。ありがたいです。この少人数向けサイズの提供も、中国料理のレストランとしてはかなり先駆的に取り組んできた南国酒家さん。この他にもいろいろな“変化”にチャレンジしてきたそうです。
「より良いものを求めて、食材も調味料もほぼ全部見直してきたんじゃないでしょうか。仕入れ先もそうです。乾物や缶詰を扱うところから、お寿司屋さんが取引しているような生鮮関係のところにシフトしてきた。鮮度の良さで勝負するような食材も、どんどん中国料理に取り入れていこうという思いからですね」
「何にしても“変える”のは、やらなきゃいけない仕事が増えるので大変ですよ。でも、必要に応じてパッと素直にチェンジできるようじゃないとだめですね。こういう一つひとつの改革は、使命感というよりも“やって当たり前”のこと。だから『リスクを抱えてでもやる』というような感覚ではなかった。変えない方がリスクなんですから。変えることの方が自然なんだと思います」
こうして、どの中国料理とも違うオリジナリティーを育て上げてきた南国酒家さん。取引先の方には、「もう中国料理というより“南国スタイル”の料理として確立している」と言われているそうで、いやはや、恐れ入りました。