山口県にある旭酒造。ここは、大人気の日本酒『獺祭』を醸造している酒造メーカー。実はこのメーカーには酒造りに欠かせない杜氏がいない。酒造りは、社員がデータを管理しながら科学的に造っているのである。それ以外にも、23%という日本最高水準の精米歩合を実現したり、もろみから圧搾せず、遠心分離機によって無加圧状態で酒を分離するなど、新しい技術で日本酒を造り続けている。その中で生まれたのが、大人気の『獺祭』。今ではなかなか手に入らない高級な日本酒となっている。
そして、この『獺祭』だが、いくつか種類がある。今回は、この中から4種類の『獺祭』を選んで飲み比べる事にする。
まずは、『獺祭スパークリング』からスタート。酒宴の幕開けは炭酸系が定番。ビールやシャンパンなどがその一例だが、はたして「獺祭」はどうだろうか。早速いただこう。
程よいシュワシュワ感が体中にはじける。お味は上品な甘さが突き抜ける感じ。これはいい! シャンパンより甘み・フルーティー感が強いのではないだろうか。というか、シャンパンの方があっさりしている?『獺祭』はちょっと味の濃いシャンパンという感じだ。自分的にはこちらが好み。素直に旨い!『獺祭』飲み比べは、素晴らしいスタートとなった。
次にいただくのは、『獺祭 純米大吟醸2割3分』。なんとこの酒、精米歩合を23%までギリギリに削った贅沢なお酒。
これには料理をあわせよう。鮪の握りだ。まずはお寿司を先にいただく。鮪の旨みが口中に拡がる。
そこに、『獺祭 2割3分』をあわせる。この酒、旨い!! 雑味がまるでない。究極のまろやかさだ! そして上品な甘さと旨みが滲み出る! 最高の美味しさ! こんなに柔らかで、研ぎ澄まされた美味しい日本酒は初めてだ。鮪の旨みは、『獺祭 2割3分』のまろやかさと相まって、口中を駆け巡る……、が、これはたとえ肴がなくてもいい気分にさせてくれるのではないだろうか? お酒だけをじっくり楽しみたい、そう思わせる旨さがある!
次は『獺祭 純米大吟醸3割9分』。先程より精米歩合が若干落ちるが、それでも39%と凄い!
早速いただこう。これも先程のお酒と味は変わらず、同じようにまろやかで旨い。しかしほんの少しだが尖っている。でも、これは同時に飲み比べないとわからないくらい……本当に少しの差。だが少しとはいえ、16%の差はそれぞれの個性の違いにきちんと現れてくる。
これには「鯵のなめろう」をあわせる。青魚独特の旨みと味噌の甘みがいい。実に新鮮! この料理全体を包み、旨みをさらに引き出してくれるのがこのお酒。肴もお酒もいう事がない。が、やはりこれも、お酒だけで楽しむのもいいかな、という気が少し芽生えてしまう……。仕方がない、それほど美味い酒なのだ。
最後は『獺祭 純米大吟醸50』。今回飲み比べる中では一番ポピュラー。
これも旨い。お味はこれまでのものとほぼ同じ。しかし一番尖りが出て感じられる。これは比較的はっきりしている。「2割3分」などと比較すると大分違っている。ただし、単品で出されたらわかるかどうか……。
これにあわせるのは、魚の煮付け。甘辛く煮付けられた魚だ。旨い! 出汁の塩梅がちょうどいい。で、お酒がその出汁と融合し旨さを演出する。
「2割3分」や「3割9分」は、酒と肴のペース配分でいうと<酒・酒・酒・肴・酒・酒・酒>という形で楽しみたいが、この「50」と煮付けは<酒・酒・肴・酒・酒・肴>ぐらいの感じだ。
今回4種類の『獺祭』を飲み比べてみた。そのどれもが素晴らしかった。中でも印象が強かったのは、やはり「2割3分」。そして次に「スパークリング」。
「2割3分」はその究極のまろやかさに驚愕した。ここまでまろやかでスッキリした旨み・甘みのある日本酒は初めてであった。そして、「スパークリング」は『獺祭』の旨みが炭酸と共にはじけ、体中に染み渡った。炭酸好きの自分としては最高だったのである。いずれにしろ高価なお酒なので、そう度々はお目にかかれないだろう。
総じて言えるのは、このお酒は、肴にあわせるのもいいが、まずはお酒そのもののお味を楽しむのが一番なのだろう。<酒・酒・酒・肴・酒・酒・酒・肴……>しまいには<酒・酒・酒・酒・酒……>という具合にやるのがピッタリのお酒である。