【お前もなめろうにしてやろうか?】いろんな魚介を叩きまくる ~なめろう博士の異常な愛情~(1)

我がなめろう研究室へ、ようこそ

「なめろう」……この甘美な響き、魅惑のサウンド。何度でも口に出して言いたい、なめろう、なめろう……。どうだい、君もそう思わんかね。後ずさりしなくたっていいじゃないか。ここに足を運んでくれて、私は嬉しく思っているのだよ。ようこそ、バッカス大学ツマミ学部、なめろう研究室へ。君はこのラボへやってきた、16年ぶりの学生だ。ヒャッヒャッヒャッ。

なめろうの定義は知っているかね。「なめろうとは、房総半島沿岸部周辺などに伝わる郷土料理で、たたきの一種である。保存は利かず、調理後すぐに食すのが普通である」……うむ、ウィキペディアの完全コピペ、ありがとう。しかし安心したまえ、それ、私が書いたやつだ。なんてね! ヒャッヒャッヒャッ。

なめろうと聞いて、たいていの人が思い浮かべるのは、まあアジやイワシだろうね。それらを叩いたものがなめろう、と思っている人も少なくない。だがね、私の知る限り、何らかの食材に味噌ベースで味を付け、あとは叩いて叩いて叩きまくって叩いて叩かれて叩き返して原形をとどめなくなるまで叩いて叩いて、ヒャーッ!……失礼、ハアハア、ちょっと興奮してしまったが、ハア、とにかく叩けば何でも「なめろう」なのだよ、ハアハア。

いささか喉が渇いた。君、そこの液体を取ってくれ。ビーカーにC2H5OHと書いてある、それだ。何を躊躇している? そうだよ? 純度100%のエチルアルコールですが? 何か? 私はね、どうもH2Oが合わなくてね。いいから早くしたまえ、ほれ、よし、(グビグビ)、プハーッ。これじゃないと体が潤った気がせんのだよ。

ツマミとしての可能性を追求しまくる

ツマミとしての可能性を追求しまくる

エチルアルコールといえば、酒となめろうは実によく合う。その完璧な相性は、特殊相対性理論から導き出された特酒相性理論によって既に証明されている。シンクロ率に換算すると「6×10の60乗%」という天文学的な数字になり、この相性の良さは「女子アナとプロ野球選手」のざっと29万倍だ。

さて、前置きはこのぐらいにして、私の目下の研究テーマだが、酒となめろうの相性をもっと細かく分析したいと思っている。さっきも言ったが、「叩けば何でもなめろう」であるのなら、いろいろな食材でなめろうができるわけで、それぞれ酒との相性にも特徴があるはずだ。さらに合う酒の種類も違ってくるだろう。

今回は取り急ぎ九つの魚介を用意した。一つずつ叩いて叩いて叩きまくって、なめろうとしての能力、ツマミとしての素質を徹底的に調べ上げ、学会で発表してTEDのプレゼン動画みたいにスタンディングオベーションを全身に浴びたいと思っているから、そのつもりで。ん? なんだその「そのつもりって……?」という間抜けな顔は。いいかね、君は今この瞬間から本研究のアシスタントなのだよ。自覚を持ちたまえ。

どんな素材も叩けばなめろう。そして君もまた叩くほど成長する一つの素材だ。なめろうと君の前途には、無限の可能性が広がっているのだよ! 見えるかね! 見えないわけがないよね! ヒャーッ! さあ、大実験の始まりじゃ! この包丁で(ギラリ)、どいつからなめろうにしてやろうか?

<続いては(2)9種類の魚介をなめろうにしてみた・前編です>