天ぷらがポルトガル発祥の食べものだと、知っていましたか? 一説には、ポルトガルのシーフードフリッター(魚介の揚げ物)が南蛮渡来の料理として日本に伝わったのが元になっているとか、ポルトガル語の「temperar(調味料を加える)」「tempero(調理、調味料)」が「てんぷら」になったとか言われています。だから、天ぷらとポルトガルワイン、合うんですよこれが。
という話を聞いて、思わず誰かに言いたくなって、のっけから書いてしまいました。編集長Dです。今回お邪魔したお店は、こんな「言いたくなる」「シェアしたくなる」ネタと、おいしくて新鮮な旬のタネが盛りだくさんの天ぷら屋さん。天ぷら? なんだか胃がもたれそう……、女子会だとちょっと入りにくいかな……、と思ったあなた。その心配は気持ちいいくらいにひっくり返ります! で、それがまた誰かに言いたくなるネタになるんですよねえ。
東京・恵比寿の東口界隈は、にぎやかな西口に比べるとしっとり落ち着いたハイセンスなエリア。夜な夜な飲みに集まるのは、この街に住んでいたりガーデンプレイスの外資系企業に勤めていたりする、「暮らしの中に恵比寿がある」人たち。そんなちょっと憧れすら抱いてしまう人々が、「天ぷら」を、しかも「立呑み」で楽しむために押し寄せている店があるらしい……。もう既に誰かに言いたくなりますね。
そのお店がこちら。昨年10月のオープン以来、感度の高い呑兵衛&呑み姫の間で話題になっている人気店「喜久や」さんです。
いいですか、もう一度言いますよ。「天ぷら」屋さんです。どうですか、写真を撮ってFacebookやインスタに上げたくなる、この「拡散力」のあるインテリア! 天ぷらと聞いてまず想像する、あのお店に入ったときの油の匂い、床やテーブルの若干ベタつく感じ、ありません、ナッシング。だからこそワイングラスを厨房のそばに吊るしたり、粋な盆栽をディスプレイしたりできるわけです。
「白木のカウンターと白壁、さらに白とブルーを基調にしたアートを額装するなど、ベタな和風ではなくて、ニューヨークとか海外のセンスの良いエリアで受け入れられそうなスタイリッシュな日本のテイストをイメージしています。この雰囲気で天ぷら、かつ立呑みというのがありそうでなかったコンセプトのようで、受けてますね」
そう語るのは、お店を運営する株式会社 一期一会の本間儀彦社長。「天ぷら」「立呑み」=「油っこいオジサンの世界?」という固定概念は見事にひっくり返されて、今は来客の半分以上が女性。女同士2~3人のグループがバンバンやって来ては、サクッと飲んで帰っていくとのこと。さらに近隣で在住在勤の外国人チームがバリッとスーツで現れて、ビール片手に陣取ってパブ状態になる夜もあり、本当にニューヨーカー御用達の路面店さながらのノリですね。
女性客が多い秘密は、もちろん居心地の良い内装もありますが、全面ガラス張りで中の様子が外から見える安心感も大きいかと。既に多くの女性客でにぎわっているのが見えると、やっぱり入りやすいですよね。
「バリキャリ風のカッコイイ女性が大ぶりのワイングラスを手にスタンディングでカリッと揚げたての天ぷらをつまむ。そんな新しいスタイルをここで見せたかった。お客様がそのまま絵になるような天ぷら屋、いいと思いません?」思います! 思いますとも社長!
「そして素敵な女性が飲んでいるのが見えれば、男性も入ります(笑)。さらに彼らは、次回女性を連れてやって来ますね」そうなんですよ。おいしい天ぷら屋なんだけどオシャレで、立呑みなんだけど女子も多くて、ワインがめちゃうまくて……と、女性に言いたくなるキラーコンテンツが満載。間違いなく「誘いたくなる店」ですね。
さてこんな“シェア欲が刺激される”「喜久や」さんですが、お店のコンセプトはどういったきっかけで生まれたのでしょうか。
「立呑みは海外にも発信できる日本の文化だと思っていて、このスタイルには元々関心を持っていました。では立呑みと何を組み合わせるか、と考えて行き当たったのが天ぷらです。これはお店を始めてからわかったことでもありますが、夜にお酒を飲むシーンで天ぷらを食べている人って、意外と少ないんです」
「特に女性は、ランチで食べるとか、お蕎麦屋さんで頼むとかはあっても、専門店でちゃんと食べた経験が少ない。でもおいしい天ぷらは、皆さん食べたいんですよ。そこで立呑みと合わせることで、天ぷらに感じているとっつきにくさを変えられるんじゃないかと考えました」
確かに寿司なんかに比べると、天ぷらって選択肢が少ない気がしますね。おいしいものを食べようと思うと、ものすごく高いというイメージになってしまう。それに加えて、油を使うのでヘルシーなのかしらと思ってしまう女性も多いでしょう。いろいろとハードル、高いですね。
「まず価格帯については立呑みスタイルにすることでかなり抑えられています。天ぷらをしっかり食べてお酒を何杯か飲んで3~4千円、といった感覚ですね」
「そして当店の天ぷらは油切れのよい揚げ方にこだわりがあって、衣に油が吸着せずカリッと仕上がるので、お客様には『胸焼けしなかった』『もたれる感じがしない』とよく言っていただきます。それに、食材の良さを損なわずに一気に過熱する天ぷらは、旬の野菜や魚介がきちんと味わえる、そもそも健康的な考え方にマッチした料理なんです」
全然胸焼けしない天ぷら、けっこう食べて飲んでも5千円でおつりがくる……、なんて誰かに言われたら、ちょっと気になってしまいますよね。実際「知り合いがそう言っていたのを聞いて来ちゃいました」というお客様も多いのだとか。
「天ぷらのハードルを下げて、立呑みのクオリティを上げる。二つを組み合わせる狙いはそこですね。そうして女性が一人でも気軽に入れる、全く新しい洗練された空間をつくろうと始めたのが『喜久や』です。このコンセプトは有難いことに多くの方に受け入れていただいていますね」
お客様の中には「人生で、今がいちばん天ぷら食べてますよ」という方もいるそうですが、この声、「喜久や」さんの人気ぶりをリアルに表しているかもしれませんね。
ということで、感度の高い恵比寿人たちのハートをつかみ、さらに人が人を呼んで繁盛中の「喜久や」さん。「知り合いに教えたら『私も連れていけ』と言うので今日は連れてきました」という“引率パターン”も増加中です。(2)では、お待ちかねの天ぷらとお酒の数々をご紹介。一度口にすると、これまた誰かに言いたくなりますよ!