居酒屋『魚金』は酒飲みの天国である。コスパ抜群の料理に美味しいお酒。新橋に店を構えてから、瞬く間に都内に数十店舗を展開する一大チェーンとなった。言うまでもなく『魚金』の最大の魅力は、客を驚愕させ、楽しませる料理の数々。今回は、『魚金 浜松町店』のメニューでその魅力を解析する事にしよう。
客のほぼ全員が頼むのが「お刺身3点盛り」。値段は1300円弱と、居酒屋にしてはちょっと高めだが、その内容に誰もが驚く! 3点盛りといいながら、この日はなんと7点盛り。
しかも、それぞれのお刺身は身が分厚く大振り! それに、生牡蠣などの高級品もさりげなく盛られている。初めてこれを見た客は、誰もが歓声を上げる。3点盛りと言いながら、予想だにしない盛りの良さと内容に喜びが爆発するのだ。これも、『魚金』の戦略の一つである。お得感を見事に演出しているのだ!
早速いただいてみよう。分厚い鰹をいただく。その大きさに毎度のごとく驚くのだが、食べてみて更に感激する事になる! 何しろ新鮮で美味いのだ!! 生臭さが全くなく、鰹の旨みがほとばしる。鰹のお味に夏本番の到来を感じる。素晴らしい!
次に生牡蠣をいただこう。あわせるお酒はもちろん日本酒、「尾瀬の雪解け」。『魚金』、定番の日本酒である。
群馬県の龍神酒造から直接仕入れ、低価格で提供する。1合390円からと格安!『魚金』にはこの他にも、日本全国の有名地酒が揃う。しかし、ここの魅力を味わうためには最初の一杯はこれがお勧め。
一口いく。美味い! ほんのりとした甘みを感じ、飲み口はスッキリ。決して食材の味を壊さない。牡蠣の旨みに自然に寄り添ってくれる。やさしいお酒だ。
大振りの牡蠣は、旨みが充分で、海の香りが口中に拡がる。幸せを感じる瞬間だ! 冬の牡蠣もいいが、夏の牡蠣もなかなかのものだ! 少人数では食べきれない“7点盛り”のお刺身の饗宴は、宴の最後まで続いていく……。
次に客の誰もが驚く仕掛けが、メニュー一品一品のボリューム感。この日、2品目に頼んだのは「わらさのカマ焼き」。なんと大きなカマが二つものっているではないか!
このボリュームに誰もが驚くが、そのお味も絶賛に値する。
一口いただくと、絶妙の塩加減と魚の芳醇な旨みに圧倒される。このお料理に合わせるのは生ビールとしよう。
炭酸のあっさり感と、ホップの苦味と甘みが「わらさ」のお味にマッチする。この大きな「わらさ」の身をビールでどんどん腹の中に流し込んでいく。焼き魚とビール。実にいい組み合わせである。
客の誰もが驚く『魚金』のボリューミーな策略を見事に攻略したあとも、更に次の仕掛けに挑む。〆に頼んだのは、「オムそば」。言うまでもなく、焼きそばをオムレツ状に卵で包んだ料理。普通のお店で頼むと、大体こんな感じ……。
ところが、『魚金』ではこうなってしまう!
『魚金』はどこにでもある料理を、突拍子もないアイデアで生まれ変わらせる。こんな風に料理を供されると、客はそれぞれのメニューがどんなものか、気になって仕方がない。ごく普通の料理も多いのだが、たまに出されるこんなアイデアに客はハマるのだ。ど真ん中のツボになる。
「オムそば」を割ってみる。中には、約束どおり「焼きそば」が顔をのぞかせる。食べてみる。ソースとマヨネーズが効いた定番の「オムそば」である。というか、「焼きそば」が少ないので、“そば入りの玉子焼き”の様な……。味は普通に美味しいのだが、このアイデアそのものが客をひきつける『魚金』の仕掛けなのである。
この料理に合わせるお酒は「知多ハイボール」。定番の「角ハイボール」と違い、トゲがまったくなく、スッキリした飲み口。この料理のアイデアに感心しつつ、〆の時を爽やかに迎えるにはピッタリのお酒。
玉子とソース・マヨネーズという、濃い目のお味をさっぱりと綺麗に流し込んでくれる。宴の最後にピッタリである。
今回も『魚金』の仕掛けに自らのっかりながら、大いに楽しませてもらった。現在このグループは30店舗弱を展開する。今後ますます目が離せないブックマークのお店だ。それと同時に次なる仕掛けが気になるところ……。このこと自体が、この店が客を引き付ける最大の魅力なのだろう。