普段食べている肉のことを考えてみよう。たいていの人は鶏か牛、豚だ。魚も厳密には肉と言えるだろう。でも、たった4種類の肉を毎日食べ続けて飽きないだろうか。ちょっと変わった肉を食べてみたいという気にならないだろうか。
そんな願いを叶えてくれるのが本日紹介する大阪・千日前の「なんば赤狼」。
千日前名物「味園ビル」のスロープを上りすぐ。店内に入ると、真っ赤な柱と怪しい輝きの照明がお出迎え。「何とも怪しいところに入ってしまったぞ」と思わせてくれる。でも、店員の方は皆ご親切なので心配ご無用。
さて、この店で取り扱っているのは「ジビエ料理」。滅多に手に入らないワイルドな動物の珍しい肉が食べられる店なのだ。
その中でひときわ目を引くのが、ワニ。そう、あの獰猛で巨大な爬虫類、鰐だ。
そのワニの「足」をいただく。生の状態だと少しぶよっとしていて意外と柔らかい。今回調理するワニはオーストラリア北部に生息するソルトウォータークロコダイル。その名の通り海水と淡水の中間地帯に棲んでいるのだが、大変凶暴で人をも襲うらしい。幸いこちらの店で出されるものは家畜であり、人喰ではないのでご安心を。
そんなワニ肉、フライドチキンのようにパリッと揚げるとこんな感じ。ガーリックと合わさった香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
ビールはレーベンブロイを選択。麦芽を100%贅沢に使用した、600年以上の伝統を持つドイツの逸品。スパイシーなワニ肉にはまろやかさを持ったビールがよいとの判断によるものだ。
では、いざ実食。脂がすごいので紙を何枚も巻いてかぶりつく。食感としては鶏に近い。だが、比べものにならないほどの噛みごたえ。ひたすら噛みしめていくと、内側から旨味が吹き出てきて口中に広がっていき、ビールが欲しくなる。
流し込むレーベンブロイ、まろやかながらしっかりとしたコクとキレ。カーッとしたスパイシーさが全身をかけめぐり、何とも言えない。ワニのエネルギーが麦芽と混じって元気になっていく。クロコダイル、旨いぞ、美味しいぞ。コラーゲンもたっぷりで美容にも効果的、いいことずくめだ。
以上、「なんば赤狼」のワニ肉レビューでした。
こちらの店では他にも、国内で狩猟したイノシシやシカの肉を食べることができる。いずれも信頼できる業者から仕入れたもので、安全面も問題なし。
「狩猟」と言うと趣味で動物を撃つといった悪いイメージをもたれがちである。だが本当のところは決してそうではなく、増えすぎた生き物によって引き起こされる獣害をくい止めるなど、人と自然の営みを守り生態系を保全する、共存法の一つとも言える。
食を通して遠く離れた自然と接し、理解を深めてもらえたら――。そんな思いを、おいしい料理と酒とともに伺い知ることができた。