【不条理】筋道が通らないことやルール無用の振舞いなどを指す。
そんな不条理な事が、先日、我が家に起きた。信じられない事だ。詳細は、まあ酒の席(いや酒の記事)ではヤボなので控えるが、その日起こった事件は許されることでは無かった。社会で生活していれば、不条理な出来事に出合う事もあるだろうが、あまりの「怒り」で私の全身には鳥肌が立っていた。(写真はイメージです)
とうことで私達家族は晩酌を中断した。冷蔵庫には、その晩飲まれるはずだったビール達が不思議そうな顔をして並んでいる。私は普段、ビールはその日飲みきる分しか冷やさない。それが今夜はまだまだ残っている。このビール達のピークは今夜だったのに。こんなにも屈辱的な光景は見たことが無い。我が家の冷蔵庫までが、汚されたような夜だった。
夜が明けても怒りは全く消えないし、むしろ消したくなかった。「長い物には巻かれろ」?ふざけるな!この悔しさを刻みつけよう。「怒り」に絡めた酒と怒りのつまみでノドに焼きつけるんだ!探して探して探し回って、そして、出逢った。
「アングリーボーイ」?まさか「怒り」がビール名って、これは俺の事じゃないか!!!そして、ん?んんん?
「炎」!?
このメッセージは……待てよ。炎→といえば中華→といえばマーボー?『そうか麻婆豆腐か!』
怒りを表現するのに、これほどピッタリくる料理も無い。やるべき事が見えた(シャキーン!)
我が家ではほとんど中華料理を作らないのに、何故かフライパンは「中華の鉄人 陳健一」仕様だった。
間違いない、完全に導かれている!「早く俺を火にかけろ!」と鉄鍋が叫んでいる。陳健一と言えば、四川料理か……
先日入った居酒屋のつまみに、随分パンチの効いた隠し味がしてあった。気になったので調べてみると、それが花椒(ホアジャオ)。中国の山椒のような物で、山椒よりもさらに芳香、辛みが強く、怒りを焼きつける為に生まれてきたようなスパイスだ。
花椒を探したが中々売っていなかったので、花椒入りのラー油にしてみた。大丈夫、怒っていればそれで良い。
「怒っているなら激辛料理をヒーヒー食べて、汗と共にスッキリ流しちゃいましょう!」……そんな事はしない。心が傷ついてる上に、舌まで痛くしてどうしようと言うのか。キッチリと自分を喜ばせる最高の味付けにしなくては!美味ければ美味いほど記憶に刻まれる。そして初めて作る四川風麻婆豆腐は、驚くほど簡単な料理だった!
1 豚ひき肉を炒める。(ひき肉から油が出るので油はひかなくてOK。量は好きなだけ)
ニンニクやショウガも生を使うなら、このタイミングで投入。刻んだ生を使った方が、触感が楽しい。(チューブを使う場合は調味料を入れる時に。量は好きなだけ)
2 お好みで、刻みネギを投入。(量は好きなだけ。出来上がったら最後にまたたっぷりとまぶすのがオススメです)
3 調味量(★)と水150cc投入。混ぜます。
★【調味料】以下を全て混ぜ合わせる。
・豆鼓醤 大さじ1杯
・甜麺醤 大さじ1杯
・ガラスープの素または味覇 大さじ1杯
・豆板醤 これはお好みで味を見ながら。ちなみに使わなくても美味しい
・紹興酒 大さじ2杯
・砂糖 大さじ1杯
4 豆腐を投入。(量は好きなだけ。ちなみに今回の“アングリー”バージョンは3丁!)
5 煮立ったら中火で5分ほど煮込みます。その間に片栗粉小さじ2.5杯を同量の水で溶きます。
6 鍋を揺すりながら水溶き片栗粉を入れ、とろみをつける。ああ、もう出来ちゃう!
そろそろ相棒を呼んでこなければ。あの時の「怒り」は、熱い怒りではなくて全身に鳥肌が立つようなたぐいの【冷たい怒り】だった。それならビールは雨で冷やすしかない。冷たい雨に打たれながら耐える、耐える……からの……おぉ、良い顔をしてるじゃないか。あの瞬間の怒りがよみがえってくる!
「悔しい!飲むぞーっ!!!」もうテーブルに料理なんて運ぶ余裕も、皿に盛り付ける余裕も無い。台所が俺の全てだ!そしてビールをノドに流し込んだ。苦々しい味わいが……
……と思ったら、「あれ、美味い!?」正直驚いた。もっと力任せな味だと思っていたのだ。パンチだけを強調してくるのかと思いきや、口に含んだ時はしっかりとした甘さがあるのに、後味は少しピリッとした苦味がある上に、どこか爽やか。これは上級レベルのビールだ!などとちょっと感動したりする。
そしてお次は麻婆豆腐だ。鉄鍋へスプーンを差し込んで、直でかきこむ。
「うわ、ウッマ!」
これは最高に美味かった!我ながらお金を取れるレベル。この量だと\2,500。ここから更に黒コショウ・花椒を足していくと\3,500に跳ね上がった!四川風麻婆豆腐はそこそこ美味しく出来る事は予想していたが、軽く予想を超えてきた。
そしてこのビールとの組み合わせ、意外と合う!なおかつ、アングリーにも四川麻婆にもちゃんと【怒り】が感じられる。ネガティブなだけの気持ちに支配されていた自分が、この組み合わせに少しだけ救われたような気がした。