シシカバブ。数多くの香辛料を使い、マトンの挽肉を焼き上げた逸品。

【普及価格ワインの実力チェック】オーストラリアの赤ワイン「ワラビー・クリーク・シラーズ」は「羊たち」とのマリアージュを楽しませてくれるのか?

最後のシシカバブは難敵である

シシカバブ。数多くの香辛料を使い、マトンの挽肉を焼き上げた逸品。

最後に合わせるのはシシカバブ。数多くの香辛料を使い、マトンの挽肉を焼き上げた逸品。一口いただく。個性豊かなスパイスの香りと、マトンの匂い・味が口中に充満する。今回の料理の中で一番「羊」を感じる。これはいい! ジューシーで香りも好きな部類だ。

さてワインを合わせてみる。シシカバブのスパイシーさとその匂いに若干押され気味ではある。ワインにもう少し強めのタンニンと香りが欲しい気がしないでもない。だがシシカバブの方が「主役」という位置づけで考えれば、「ワラビー・クリーク・シラーズ」のすっきりした果実味と仄かなタンニンが出しゃばることなく、羊肉を上手に引き立てているとも言える。順応というのか融合というのか、これはこれで美味い。

以上3品の「羊たち」とのマリアージュ、微妙なところだがひとまず合格点をつけたいと思う。「ワラビー・クリーク・シラーズ」と「羊肉料理」の組み合わせは、アリ・ナシでいえばアリ、だ。

普及価格ワインのマリアージュの成否を決めるものとは?

今回選んだ普及価格ワインは、シラーズでも軽く飲みやすい部類。羊肉料理との組み合わせもまずまず満足できた。しかし、濃厚な羊肉料理には少し物足りない気がしたのも事実。例えば、シラーズ品種のワインでも、もっとタンニンの重い濃厚でスパイシーなものだったら、「シシカバブ」にも充分張り合えただろう。

ただ、それが1000円前後で手に入るかどうかはわからない。シラーズの特徴を充分に、そして美味しく醸し出すワインとなると、高級ワインの仲間入りをしてしまうかもしれないからだ。今回のテーマ「普及価格ワイン」と「羊肉料理」の組み合わせから外れてしまう。

オーストラリアのワイナリーが作った赤ワイン「ワラビー・クリーク・シラーズ」

となると、結局のところ飲み手が満足の重点をどこに置くかが重要ということになる。普及価格ワインでも、料理との相性で種類を上手く選べばマリアージュはもちろん楽しめる。だがより良い組み合わせを追求していくと、ワインへの要求はきりがなくなる。そして普及価格の枠を超えてしまい、値段がそれなりの高級ワインになってしまう。

「普及価格ワイン」によるマリアージュの成否の鍵は、ワイン自体の実力もさることながら飲み手の満足度のハードル設定に尽きる?のかもしれない。……という、しごく当たり前の事実にたどり着いたところで、今夜はお茶を濁すとしよう。